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立ち退き料などの貸主の負担について

■□相談内容 

木造2階建ての1軒家を貸しております。
初回の契約時に、向こう4年間でという条件を口頭ではありますが伝えてあります。
この物件は、すぐに住む予定はないが4年後に私が住む為に購入したもので、
その間だけ貸すつもりでいました。
もちろんその間、私はアパートを借りて住んでいます。

2001年2月に1回目の更新を行った際に、
次回の更新は『貸主が使用するため更新は行いません』
という条件を「その他事項」として記載してありますが、
通常の賃貸契約のために今回の問題となっています。

来年2月に契約終了のため、
8月に仲介業者から借主にその旨を伝えてもらってあります。(口頭のようです)
その時は借主も了承しており、同等の賃料で次の物件を探して下さい
と依頼されたので、数軒紹介したようです。

その後、借主からの連絡は一切なく、
つい先日借主の勤め先の顧問弁護士と名乗る方から、
仲介業者の所へ契約更新の件で相談があるとFAXが届いたそうです。
仲介業者が電話にて確認したところ、生活が苦しくて
引越し費用がないので立ち退き料として100万円欲しいとのことでした。

私としては、立ち退き料を支払わずに
退去してもらう方向に持って行きたいのですが、やはり難しいのでしょうか。
物件は古くこのまま居られると、修繕依頼等が発生してくると思われますし、
借主の同居人(両親)が高齢であることから、
今後さらに引っ越すことが難しくなって行くと考えられます。

私は購入した物件のローン、その物件の税金、家賃収入による税金、
現在住んでいるアパートの家賃を支払っています。
これらはとても家賃収入で賄えるものではなく、
確実にマイナスとなっており、正直言って私のほうが生活がきつくなっている状態です。
それでも立退き料を支払う必要があるのでしょうか。
また、それだけの貯蓄がなければ、借金をしてでも支払うことになるのでしょうか。

友人・知人等を通じて色々相談もしてみましたが、
やはり金銭での解決が無難であり、一番よい方法のように言われています。
定期借家での契約への切り替えもできないようですし、立ち退き料を支払うのが
困難な状況のため、なにか良い方法がないものかと困っております。

どうかよきアドバイスをお願い致します。


□■アドバイス:1

定期借家契約について説明します。
定期建物賃貸借は、内容的な要件としては
期間を確定的に定めることがまず第一に必要です。
この制度では、
借地借家法第29条に定める1年未満の建物賃貸借を期間の定めのないもの
とみなす規定は適用されないこととされており、1年未満でもよいこととなっています。

定期建物賃貸借は、改正後の借地借家法第38条に規定されていますが、
形式上の要件として、「公正証書による等書面によって契約する」
ときに限って、定めることができるものとされています(法第38条第1項)。

この場合、貸主は借主に対して、契約の更新はなく、期間の満了とともに
契約が終了することを、契約書とは別にあらかじめ書面を交付して
説明しなければなりません(法第38条第2項)。

貸主がこの説明を怠ったときは、
その契約は定期借家としての効力は否定され、
従来型の、契約の更新のある借家契約となります。

つまり、法律的に解釈すると、貴方の場合は
普通賃貸借契約に当たると思います。この場合は100万円は兎も角、
ある程度の立ち退き料の支払いは必要になると思われます。

今現在頂いている家賃は1月当たり幾らになるのでしょうか?
(高原開発・涌井さん)


■□相談者より

アドバイス有難うございました。
借地借家法第38条については把握しております。
(改正前/改正後ともに)
備考的扱いで「次回更新無し」とうたってあっても
法的には効力が無いことも理解できました。
始めの相談にも書きましたが、通常の借家契約から
定期借家契約への切り替えもすぐにはできないということは、
契約更新のときどのようにすればよかったのでしょうか。
参考のため教えていただけますか。ある方の意見では、
仲介業者のミスがあったので損害賠償の請求ができるかもしれないようです。
一度、無料法律相談に行ってみようかと考えてます。
そこで良い意見がもらえなかったら、弁護士への相談を考えています。

 > 今現在頂いている家賃は1月当たり幾らになるのでしょうか?
95,000円です。


□■アドバイス:2

定期借家の経緯について若干説明します。
1999年12月15日、
「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」
が公布され、定期借家権の制度が、2000年3月1日、施行されました。
この法律は、いわゆる「定期借家権」の制度を導入するもので、
長年続いたこれまでの借家制度を基本的に変更するものです。
従来は、建物の賃貸借契約については、契約期間が満了しても、
自己使用の目的などの「正当な事由」がない限り、
貸主は契約更新を拒否することができず、
これに反する借主に不利な契約は、無効とされていました。
改正では、このような制度に加え、
期限を限定した建物賃貸借契約が認められたのです。
なお、この制度が適用されるのは、
2000年3月1日以降に締結される契約で、
これより前に締結された建物賃貸借契約については、
従来通り、「正当な事由」がない限り
(たとえ、合意解約して、新たに契約を締結しても)、
更新拒絶はされません。

つまり、貴方の場合も該当すると思いますが、
2000年3月1日以前の賃貸借契約は、例え合意解約して
新たに契約したとしても、旧来の借地借家法の対象たる
普通賃貸借契約とみなされると言う事になると思います。

然し、それ以前の事ですが、
平成4年8月1日の借地借家法の改正では、
貸主に転勤等のやむを得ない特別の事情がある場合には、
一定の期間に限って、つまり、その期間が終わったら
必ず家を返してもらえるという約束のもとに、
借家契約をすることができるようになっていたと思います。

確か、当時でも期限付き借家契約は重要事項に、その理由
(不在期間のみ、取り壊し予定)を明記して契約していたように覚えています。

問題は、契約書の特約条項に期限とその理由も明記されていてかどうか?
それと、重要事項の説明書に期限付借家契約である事を
明記し、その理由も明記されていたかどうかだと思います。

平成4年8月1日以降の契約であって、
貸主不在期間中の期限付き建物賃貸借契約である事が、
はっきりしていて、重要事項の説明をしてあれば(印鑑を貰ってあれば)、
借主に対抗できる可能性は有ると思います。
唯、この点については確実に覚えている訳では有りません。
  (当社も当時、不在期間の借家契約をした記憶が有りますが、
  揉めた事は有りませんでした。貴方の場合、どちらかと言うと
  約束を破ったのは借りている側なのですが・・・・)

業者の責任としては、
この重要事項の説明と契約書の特約に期限付である理由も
明記されていなかった場合には、落ち度が有ったと言う事だと思います。

又、もし立ち退き料を支払うとしても家賃が95000円であれば、
100万も支払う必要は無いと思います。

  ※不在期間中の期限付建物賃貸借契約である事がはっきりしていれば、
   支払う事自体必要無いかも知れません。

(高原開発・涌井さん)


■□相談者より

非常にわかりやすいアドバイスを頂きましてありがとうございました。
改めて初回契約から今日までの経緯を記載させていただきました。

  1999年 1月
   近い将来(4年後くらい)に、自分が住むことを目的として
   中古物件を購入するが、すぐには入居せず親と同居する。
   購入時にお世話になった工務店の勧めもあり、その間は賃貸することとする。

  1999年 3月
   初回契約(普通賃貸借契約)⇒契約書・重要事項説明書ともに、
   期限付借家契約の記載無し。口頭ではあるが、
   4年間であることを契約締結前に仲介業者・借主に伝える。
   家賃「85,000円」 敷金・礼金「各1ヶ月分」

  2001年 3月
   契約更新⇒初回契約時に了解を得ているとおり、
   次回(2年後)は更新しないことの了解を再度得る。
   更新契約書には「次回の更新は貸主が使用するため行いません」
   と記述する。家賃「95,000円」 更新料「1ヶ月分」

  2002年 8月
   契約終了まで6ヶ月となったので、私から仲介業者(工務店)に連絡する。
   ⇒仲介業者が借主に口頭で契約終了の連絡をする。
   借主も退去を了解しており、
   次の物件を紹介して欲しいと仲介業者へ依頼がくる。
   仲介業者は数件の物件紹介資料を持って借主を訪問する。

  2002年11月
   借主の勤務先の顧問弁護士から、仲介業者へFAXが入る。
   ⇒不況のため、借主に転居する費用がないので、
   100万円の立ち退き料が欲しいと言われる。
   仲介業者から私へ連絡があり、単純に100万円とは言わないが
   多少の立ち退き料が発生することを言われる。
   有料で法律相談を受ける。
   ⇒法律的見地からいくと、通常の賃貸契約のため、少なからず
   立ち退き料が必要であると言われる。
   通常は、裁判等に費やす時間・費用等から考慮すると
   示談で済ませるほうが得策であると言われる。
   私が借主の勤務先の顧問弁護士に詳細確認のため電話する。
   ⇒借主は約束だから出て行きたい意思はあるが、
   金銭的に難しい為、今回の請求を行ったことを言われる。
   私の方も、金銭的余裕がないので立ち退き料が支払えないことを
   伝えるが、その場合はある期間は賃料を貰わないで
   その分を引越し費用にあてがってもらうしかないと言われる。
   さらに、2年後に出て行ってもらうことを約束させておきながら、
   更新料をとるのは常識的観点から不当ではないかと言われる。

  初回契約当時は、確かに私の知識不足であったことは否めませんが、
  素人考えでは期限を伝えてあるので大丈夫なのだろうと
  考えてしまうのは至極当然のように思います。
  この問題が起こってから初めて借家法を調べたり、
  このようにHP相談を行って、法律的には
  私の言い分が通らないことを実感しました。
  そこで再度質問なのですが、
  このような場合に、仲介業者の不手際になりえるのでしょうか?

  またつい最近知ったことですが、
  借主は以前にも立ち退きでもめた経緯があり、
  理由・金額まではわかりませんが
  立ち退き料を受け取ったことがあるようです。
  人を疑ってかかるのは良くないことだと承知しておりますが、
  このようなことを聞いてしまうと、
  初めから出て行くつもりがなかったのではないかとさえ思ってしまいます。
  弁護士を使っていきなり金を請求してくるのもどうかと思います。
  いくら借主の立場が強いからといっても、
  まずは期間終了時に引っ越すのは資金がないから難しいが、
  もう少しだけ期間延長して欲しいとか言ってくれればまだ良かったんですが・・・

  私の本音としては、裁判を起こして借主を攻めたいのですが、
  現実的には、今後はいかに金額の折り合いをつけていくか
  ということになってしまうのでしょうね。長々と書いてしまい申し訳ありません。


□■アドバイス:3

詳しく、説明していただいて、大体理解できました。私の考えを言いますと、

 ●借主相手の裁判等は、あまり意味が無い。
   理由は、貴方も理解していると思います。

 ●平成4年8月1日以降の契約であるので、業者に責任を問えると思います。
  貴方が客付依頼をする時に、事情を説明してあれば、
  業者は当然貸主不在期間中の期限付建物賃貸借契約を
  締結する必要が有ったし、可能であったと思います。

 ●立ち退き料等の負担や損害賠償を仲介業者請求する事ができると思います。
   (裁判等で勝てるかどうかは解りません)

 ※貸主不在期間中の期限付建物賃貸借契約について、説明しておきます。
  家主が、転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情によって、
  建物を一定期間自己の生活の本拠として使用することが困難であり、
  かつ、その期間の経過後はその本拠として使用することが明らかな場合は、
  その一定期間を確定して契約更新がない賃貸借契約を締結することができる。
  ただ、この契約はその内容を明確にし、また脱法的な契約を防止するため、
  その特約についてやむを得ない事情を記載した書面によってしなければならない。
  契約書は法律で定められた要件を満たしている必要が有る。
  不備な契約書では、更新の有る普通の借家契約になってしまうから、
  十分な注意が必要である。契約書に記載しなければならない事項は、
  次のとおりである。

   1、契約期間を
     「何年何月何日から何年何月何日まで」と確定して記載する。
     1年未満でも有効。逆にあまり長期の場合は
     前述の要件を満たすかどうか不明確になり、
     期限付契約ではないとされるおそれがある。
   2、期限付とする事情を具体的に記載する。
   3、法26条に定める更新をしない旨特約する。

  従前の普通賃貸契約書を使用するのは、好ましくは無く当初から
  完全なものを作成する事が望ましく、できるかぎり訂正箇所のない書面が良い。
  しかし、やむを得ず従前の契約書用紙を一部訂正して使用すること
  になる場合には、次のように加除訂正し、それぞれの箇所に
  「何字抹消・何字加入」と記載して貸主借主双方の印を押印して下さい。

    1、契約書表題の頭に「期限付」と書き加える。
    2、契約期間の「~日から何年間」を
      「~から○年○月○日まで」と訂正する。
    3、更新についての条項を削除する。
    4、期限付とする事情の確認条項を契約書末尾に記載する。

  ※以上は
   平成10年(1998年)の取引主任者の講習テキストからの引用であり、
   当然1999年3月の契約時には、取引主任者が知っているべき内容であります。

 もし、貴方が正式に、将来は自分が使う予定なので、
 建物を返して貰う予定の有る契約を締結したい旨の依頼をしたのなら、
 業者・取引主任者は不手際を起こしたことになります。
 特に取引主任者の責任は重大なものと言わざるを得ないと思います。
 当然素人で有る家主の貴方に対しての説明責任、
 又契約書の作成については十分注意する必要が有ったと思います。
 業者・取引主任者に対して、立ち退き料等の負担を請求、
 損害賠償の請求を行う事は十分に可能で有ると思います。
 唯、前述のとおり裁判等で勝てるかどうかは何とも言えません。
 又、以上はあくまで、私の個人的な見解である事をご承知おき下さい。

(高原開発・涌井さん)


■□相談者より

大変参考になりました。
何度も詳しくご説明頂きまして有難うございました。
最後に涌井様が書かれたように、あくまでも参考として
今後の対応をして行きたいと考えております。

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