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土留めの撤去と舗装の申し出について

広島・女性・40代
この度、土地売買契約を締結しました。
敷地内の構築物を撤去、滅失登記の後更地にて引渡しを条件としています。
境界については引渡しまでに明示となっています。
当地の西側隣地との境界鋲(区画整理時のもの)が土留めの中心にあり、
境界確認書に署名・押印を頂き、明示したところ、土留めは共有物なので、
将来隣地の所有者が変わり、土留めが越境しているので撤去してほしいと言われると困る。
土留めを撤去して境界ポイントを入れて欲しいと言われています。
隣地は数年前に畑から駐車場にされ、アスファルト舗装がなされています。
土留めを取った跡のアスファルト舗装も売主の負担でやるべきと言われます。
土留めも敷地内の構築物だから撤去するのが契約条件であり、
何もないのが更地だから履行すべきとの申出です。
土留めは障害物でも越境物でもないように思いますが、
当方でそこまでする必要があるのでしょうか。
又、将来の境界問題をなくす方法として、
地積更正で登記するというのは、やはり問題が残るのでしょうか。
まとまりのない表現で申し訳ありませんが、ご教示下さい。


▼相談者より
早速のアドバイス有難うございます。
土地家屋調査士さんより既存の境界ポイントは、区画整理時の図面と一致しており、
問題ないと言われ、隣地所有者の立会により確認・押印を頂きました。
買主様は、境界線から土留めの内面までが構築物だから、撤去すべきだと言われています。
物理的に切り取ることができません。
現状のままで、ご納得頂ける方法として、敢て地積更正(実測・境界確認・登記)
を行い、法務局に登記すれば、所有者が変わっても当地において境界でもめることは
ないのではないかと考えています。
近隣にも農地の境界壁の中心に境界鋲が打ってあり、当方と同じ状況が見られます。
当方が購入する時点では既に現況になっており、どうした経緯で境界壁の中心を境界
として作られたものかは分りませんが、境界に問題は無く、
隣地の方も確認書に署名捺印されています。
それでも構築物として撤去しなければならないものなのか、困っています。


▼アドバイス:1
こんにちは。
ご回答の前に何点か確認させて下さい。

1.土留めはブロックでしょうか。構造、大きさを簡単に教えて下さい。

2.その土留めが存在する隣地との間に高低差はありますか。
こちらでは土留めとは高低差がある場合に設置するブロックのことを
指すことが多いのですが。

お手数ですが宜しくお願い致します。
(ディアレストコーポレーション 立川さん)


▼相談者より
ご質問有難うございます。
当地購入時には、隣地は農地で5~60㎝の高低差がありましたが、数年前に駐車場にされ、
現在は高低差がありません。
見えている部分でしか分りませんが、幅が約20cmで、コンクリートです。
その中心が境界と言うことで、側溝の壁に境界鋲があります。


▼アドバイス:2
まず問題を整理してみましょう。今回、境界の確定の件と、境界にあるコンクリート構造物(以下、「土留め」と呼びます)の撤去の件がありますので、それぞれについて考えてみます。

■境界の件
西側隣地との境界は区画整理時に確定しているものと思われます。どこで確定しているかというと、境界標が入っている、「土留め」の中心線のようです。
これは、境界線上に共同で塀を設置することは通常行われてきたことであり、また、民法にも共同で設置することを想定した条文があります。

第225条 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
2 当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。
第226条 前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。
第227条 相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。
第228条 前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

ただし、隣地との境界に高低差がある場合、通常は土留めとして、高地の所有者がその費用をもって、高地の境界内に、土砂の流出を防ぐための措置(擁壁、土留めブロック等)を講ずるべきだというのが判例です(東京高裁昭和62年9月29日判決)。ただし、この判決に反する別の下級審の判決もあります。

それらを踏まえて今回の事例をみると、隣地との高低差が以前にどちらが高かったのか不明ですが、共同で設置された「土留め」であると考えて良いかと思います。設置時の費用の負担によっては、「土留め」の所有自体はどちらか一方にあり、「土留め」の設置においてのみ、隣地の一部を使用できる使用収益権を得たものと考えることもできますが、現時点で不明な以上、共有の土留めと解するのが自然でしょう。

なお、共有の土留めであることの判断には、民法の下記条文を根拠にされても良いかと思います。

第229条  境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

ただし、この条文では「みなす」ではなく「推定する」となっていますので、一方が費用を出したなどの反証があれば、共有物とは考えません。


■「土留め」の撤去について

まず、契約書では「更地渡し」とのみの表記、今回「土留め」については何も記載がないという前提でお話しします。

「更地」の定義については判断がわかれるところであり、実際には裁判等で個別案件について判断されているのが実情かと思います。今回判例等は調べきれておりません。
なお、不動産鑑定評価基準において更地の定義があり、下記のとおりです。
「更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。」
この場合の定着物に、隣地との境にあるブロック塀等が含まれるかというと、解釈が分かれるため、実際の契約では「更地渡しとする」となっていても特約事項等で「隣地境界沿いの塀(コンクリートブロック5段積、上部ネットフェンス)については撤去を行わない」と明記するのが一般的です。

ただ、今回の場合、隣地との共有物ですので、質問者様の一存で撤去することは難しいかと思います。また、その費用や撤去後のアスファルト舗装の問題もあるでしょう。

■現実的な対策
まず、買主のいう、
「将来隣地の所有者が変わり、土留めが越境しているので撤去してほしいと言われると困る。」
という点については、再度隣地との覚書等を結び、下記のような文章を入れればいいかと思います。

・境界上に存する土留め(鉄筋コンクリート造・高さ○○cm)については、甲乙の共有物であり、甲乙所有の土地の境界上に設置されていることを確認した。
・今後、前項土留めの修理・撤去等が必要となった場合、甲乙協議するものとする。
・甲乙はその所有する土地の所有権を第三者に移転する場合、本覚書の内容を承継させるものとする。

これにより、土留めを一方的に撤去しろと言われる恐れはありませんし、そもそも、土留めは共有物であり、越境物にはあたりません、と説明すべきかと思います。

「土留めも敷地内の構築物だから撤去するのが契約条件であり、何もないのが更地だから履行すべきとの申出です。」
とのことですが、これについてはもちろん、契約書に記載がないことがそもそもの問題ですが、隣地との共有物であり、撤去はできない、買主の契約の目的(建物の建築でしょうか?)の障害ともならないので、瑕疵にもあたらないと考えている、としっかりお伝えされるのがよいかと思います。

ただ、今回の契約が解除になることも最悪想定しておくべきです。隣地所有者の承諾を得て、「土留め」の撤去、アスファルトの補修費用を払い、買主の要望通りにするというのであれば、それもひとつの方法ではあります。義務があるかどうか、というと、こういった件については法律でこう、と定められているわけではありませんので、契約書で定めるのが本来の方法なのです。
もし、撤去はできない、と買主に伝え、解除になる場合、これは契約上の錯誤(売主は更地渡しに「土留め」撤去は考えていなかった、買主は当然撤去と考えていた)による解除であるとすべきです。手付解約や、契約違反による解除となると、損害賠償・違約金等が発生します。

なお、質問にあった地積更正による登記というのは、現実的ではありません。
この場合、境界は「土留め」の中心で確定していると考えるのが自然であり、その境界を「土留め」の内側にもってくるというのは、「地積更正」ではなく「土留め部分の分筆」及び「所有権の隣地への移転」にあたります。そうすると契約の目的物自体が変質する(地番は変わらなくとも、面積が変わります)ことになります。
区画整理時の図面と境界が一致している以上、「地積更正」での登記は法務局が認めませんし、土地家屋調査士も行いません。

うまく解決されることをお祈りしております。
(ディアレストコーポレーション 立川さん)


▼相談者より

大変為になるご返答を頂き、心よりお礼申します。
選択肢が見えましたので、時間をかけて話し合いをしてみたいと思います。
また、ご報告させて頂きますので、引続きよろしくお願い致します。

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